Webデザインにおけるイラストのテイスト選択が大切な理由
2025.08.22 Posted by Design team
Webサイトをデザインするとき、多くの方が「色合い」や「フォント」「レイアウト」に意識を向けます。もちろんそれらは大切ですが、忘れがちな要素のひとつに「イラストのテイスト」があります。
イラストは単なる飾りではなく、訪れた人が最初に受け取る「空気感」や「メッセージ」を左右する重要な要素です。今回は、Webデザインにおけるイラストのテイスト選びについて、なぜ大切なのか、どう考えるべきかを解説していきます。
また、根本的なWebサイトにおけるイラストの役割と重要性についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
https://www.weblab.co.jp/blog/creator/15605.html
目次
第一印象はイラストで決まることもある
ユーザーはWebサイトを開いてほんの数秒で「このサイトは信頼できそうか」「自分に合っているか」を直感的に判断すると言われています。そのときに大きな役割を果たすのがビジュアル要素です。
文字より先に目に入るのは、写真や色、イラストです。ここで違和感を覚えると、内容を読む前に離脱されてしまう可能性もあります。
例えば、子ども向けの教育サービスのサイトに、硬くてモノクロの線画イラストが並んでいたらどうでしょう。内容がどれだけ素晴らしくても、「なんだか冷たい」「子どもには合わなそう」と思われてしまいます。逆に、法律事務所のホームページに手描き風のゆるいイラストが並んでいたら、「頼れるのかな?」と不安になるかもしれません。
こうした誤解は、たった数秒の間に起こります。人は視覚からの情報に大きく影響を受けるため、イラストのテイストはサイト全体の「信頼性」や「親しみやすさ」を決定づける存在なのです。
イラストが果たす役割は意外と多い
イラストは「雰囲気づくり」だけではなく、Webデザインの中で次のような役割を持っています。
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ブランドイメージを強化する
ロゴや配色と同じように、イラストも「この会社らしさ」を伝えます。例えば北欧風の雑貨サイトであれば、動物や自然のモチーフを多く取り入れた穏やかな色使いのイラストを使うと「北欧らしさ」を直感的に伝えられます。
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ユーザーの理解を助ける
複雑なサービスを図解したり、フローをキャラクターで説明したり。金融や保険のように難しい内容でも、イラストを使えば理解が早まり、ストレスなく読み進めてもらえます。
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感情に働きかける
柔らかいタッチのイラストなら安心感を、スタイリッシュな線画なら知的さを伝えられます。人は感情で動くことが多いため、適切なイラストは行動を後押しする力を持ちます。
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他社との差別化
既存素材やAI生成だけでは埋もれがちですが、オリジナルイラストは唯一無二。とくに競合の多い業界では、「ここならでは」の印象を残せる武器になります。
イラストのテイストを選ぶときに考えるべきこと
イラストのテイストを選ぶときは、なんとなく「かわいいから」「流行っているから」で決めてしまうと危険です。以下の観点を意識するだけで、デザインの完成度は大きく変わります。
1. ターゲットユーザーを明確にする
誰に見てもらいたいサイトなのか。子ども、学生、若いビジネスパーソン、シニア層など、ターゲットによって合うテイストはまったく違います。
- 子ども向け → カラフルで親しみやすいキャラクター
- ビジネス層 → シンプルで落ち着いたトーン
- 高級ブランド → ミニマルで上品な線画や淡い配色
2. ブランドイメージを言語化する
「信頼感」「親しみやすさ」「先進的」「優雅さ」など、ブランドが伝えたいキーワードを洗い出しましょう。それを視覚的に反映させるのがイラストの役割です。
3. コンテンツの性質を考える
説明重視のページなのか、感情に訴えるページなのか。前者は図解的なイラスト、後者は雰囲気を作るイラストが向いています。例えばLP(ランディングページ)なら感情を動かすイラスト、FAQページなら理解を助けるイラストが効果的です。
4. 全体のデザインとの調和
フォントや写真、配色とトーンが合っていないイラストは浮いて見え、デザイン全体のまとまりを崩してしまいます。その結果、素人っぽい印象となり信頼性を損ねるリスクがあるため、この点は意識しておくことが大切です。
よく使われるイラストのテイスト
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フラットデザイン風
色面でシンプルに構成。モダンで説明的なデザインに向いています。IT系サービスやアプリ紹介ページでよく見られます。
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手描き風イラスト
柔らかいタッチで温かみがあり、カジュアルで親しみやすい印象を与えます。ブログやライフスタイル系のサイト、教育分野で特に人気です。
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ミニマル線画
黒やグレーのシンプルな線で構成されるイラスト。洗練されていて高級感を演出できます。ファッションブランドやインテリアショップで多用されます。
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キャラクターイラスト
サイトの顔として機能することもあります。ユーザーと感情的なつながりを持たせやすく、サービスの利用体験を楽しいものにできます。
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リアル寄りのイラスト
商品やシーンを忠実に表現。説明力が高く、医療や工学など専門的な分野でも使いやすいです。
これは個人的な見解ですが、日本ではアニメ、漫画などキャラクターもののイラストが文化として根付いているため、どんなコンテンツもイラストで表現したり、オリジナルキャラクターを作ってみたりと国外と比べても使用することに抵抗がなく、多種多様と感じます。
実際の使用例
引用元:
左上:マガポケ | 10周年記念特設サイト(https://sp.shonenmagazine.com/10th-anniversary-pocket/)
右上:ぶどうのワンピース(https://budou-no-onepiece.com/)
左下:東京都防犯ネットワーク(https://www.bouhan.metro.tokyo.lg.jp/)
右下:社会福祉法人 檸檬会 採用サイト(https://recruit.lemonkai.or.jp/)
ブランド体験とイラストの関係
イラストのテイストを間違えると、ユーザーが受け取る印象がブランドの狙いとずれてしまいます。
例えば、金融サービスのサイトでかわいい動物キャラクターを使ってしまうと「子どもっぽい」と思われ、信頼感が下がるかもしれません。反対に教育サービスで硬い線画を多用すると「堅苦しい」「親しみがない」と感じられるでしょう。
ブランドが伝えたい「誠実さ」「安心感」と、ユーザーが受け取る「軽さ」「冷たさ」が食い違うと、サービスの良さを正しく理解してもらえなくなります。だからこそ、イラストのテイスト選びは「ブランディング戦略の一部」として考える必要があります。
考えられる成功事例と失敗事例
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成功例
子ども向け教育サービスで、ポップなキャラクターを前面に押し出したサイト。子どもには楽しさを、親には安心感を与え、「学ぶことは楽しい」というメッセージを自然に伝えることができた。結果としてブランドイメージが強化され、ユーザー満足度も向上。
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失敗例
医療情報サイトで、親しみやすさを狙ってカジュアルすぎるイラストを使用。結果的に「信頼性に欠ける」と受け止められ、ユーザーの不安を招いた。内容は正しくても、表現方法で損をする典型例です。
イラストは「空気感を決める存在」
イラストは単なる装飾ではなく、ブランドの声を形にする存在です。
- 誰に届けたいのか(ターゲット)
- どんな印象を与えたいのか(ブランドイメージ)
- コンテンツの性質や全体デザインとの調和
これらを意識してテイストを選ぶことで、Webサイトはぐっと洗練され、ユーザー体験が向上します。
「イラストをどうするか」、それは、Webデザインの完成度を大きく左右する見落とせないポイントです。
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